地球温暖化の深刻化や燃料の価格上昇などに伴い、近年では省エネ意識が高まっています。
エネルギーの消費効率に優れたさまざまな家電製品が開発・販売されており、「省エネ給湯器」はそのうちの一つです。
家計に優しく経済的で、地球温暖化防止にも貢献できるなどの利点から、各自治体や国は省エネ給湯器の設置や交換時の導入を積極的に推奨しています。
省エネ給湯器について、種類や選び方、メリットやデメリット、交換費用の目安、最新の補助金制度などについて解説いたします。
省エネ給湯器とは
省エネ給湯器は熱効率が高く、従来型の給湯器より少ない燃料でお湯を沸かすことができる高効率タイプの給湯器です。
種類はエコジョーズやエコキュート、エコフィールやハイブリッド給湯器など様々ですが、共通して光熱費の節約効果が高く、環境にも優しいという利点があります。
経済産業省の資源エネルギー庁によると、家庭内で使用するエネルギーのうち給湯は全体の27.2%と、大きな割合を占めるという調査結果が報告されています。(参照:「エネルギー白書2024」(第212-2-5)世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移)
給湯にかかるエネルギー消費量を減らすことができる省エネ型の給湯器を導入することは、、家計にも環境にとっても最適な選択と言えるでしょう。
省エネ給湯器の仕組み
省エネ型の給湯器はいくつかの種類があり、仕組みがそれぞれ異なります。
エコジョーズとエコフィールは潜熱回収技術を採用しており、従来では大気中に捨てていた排気ガスの熱を回収して再利用することで、高い熱効率による湯沸かしを行います。
エコキュートは熱を移動させるヒートポンプ技術によって、空気の熱を利用して効率的にお湯を沸かします。
ハイブリッド給湯器は、潜熱回収式ガス給湯器のエコジョーズとヒートポンプ給湯器を組み合わせたもので、ガスと電気の両方を使ってタンク内の水を加熱してお湯を作ります。
エネファームはガスを化学反応させることで電気を作り、発電時に発生する熱を使ってお湯を沸かす仕組みです。
省エネ給湯器のメリット
光熱費の削減効果がある
省エネ給湯器の最大のメリットは、ランニングコストの低さです。
従来型の給湯器と比べて熱効率が高く、ガスや電気や石油といった燃料の消費量が少ないという特徴があります。
同じお湯の量を沸かすのに、省エネ給湯器の方が燃料の消費量が少なくて済むため、給湯器を従来型から省エネ型に交換することで、給湯にかかる光熱費の削減効果が期待できるというわけです。
給湯器は平均的な使用期間・寿命が約10年と長期的に使う設備ですので、ランニングコストの低い省エネ給湯器を導入するうえでの大きなメリットと言えるでしょう。
地球温暖化の抑制につながる
省エネ給湯器は、環境にも配慮された設計となっています。
従来型と比べてエネルギー効率が大幅に向上しており、燃料消費量の削減にともないCO2(二酸化炭素)排出量の低減も実現されました。
CO2(二酸化炭素)の排出量を減らすことは、地球温暖化防止への貢献につながります。
省エネ給湯器を使用することで、環境へ配慮した生活を長期的に無理なく送ることができるのです。
補助金を利用してお得に交換できる
国や各自治体は住宅の省エネルギー化を支援しており、省エネ設備の導入やリフォームに対する補助金制度や助成金制度が用意されています。
省エネ給湯器も補助対象ですので、補助金制度・助成金制度を活用することで通常よりもお得に給湯器を交換することができます。
補助金・助成金制度は国や各自治体などが実施しており、対象や条件、補助額や対象期間、必要書類などが異なります。
地域や状況によって、どの制度が利用できるか、どの制度が一番お得になるかなども変わりますので、補助金制度の利用を検討されているのであれば、お住まいの自治体のホームページなどを確認してみましょう。
下記の「省エネ給湯器の交換設置で使える補助金制度」の項目で、省エネ給湯器の交換設置で利用できる主な補助金制度をご紹介しています。
省エネ給湯器のデメリット
初期費用が高い
省エネ給湯器は、エネルギー効率が高く長期的な運用コストを抑えることができる反面、初期導入費用が従来型より高いというデメリットがあります。
高効率な燃焼や熱回収システムを搭載しているため、従来の給湯器に比べて機器構造が複雑で、ドレン排水経路の確保など工事も追加作業が必要となるからです。
特に、エコキュートやエネファームでは、給湯器本体だけでなく貯湯タンクも必要で全体的なサイズも大きいため、機器代金も工事費用も高額となるケースが多いです。
故障リスクが高い
省エネ給湯器は高性能な分、従来型の給湯器と比べて内部の構造が複雑で多くの部品によって構成されているため、故障リスクが高くなる場合があります。
また、故障した際の修理費用も、従来型の給湯器に比べて高くなるケースが多いです。
お湯の使用量が少ないと費用対効果が得られない
省エネ給湯器は、お湯をたくさん使用するほど省エネ効果が発揮され、光熱費の節約効果も大きくなります。
一方、少人数のご家庭などお湯の使用量が少ない場合には、十分な費用対効果が得られないことがあるため注意が必要です。
お湯の使用量が少ないと、初期費用に見合うだけの節約効果が得られず、費用の回収に時間がかかったり、かえって損をする可能性がございます。
そのため、省エネ給湯器の導入前には、現在のお湯の使用状況や初期費用を回収できるかなど、よく検討することが大切です。
省エネ給湯器の比較
省エネ給湯器にはいくつかの種類があり、お湯を沸かす仕組みや使用する燃料、販売価格などが大きく異なります。
代表的な省エネ給湯器は「エコジョーズ」「エコフィール」「エコキュート」「ハイブリッド給湯器」「エネファーム」「エコウィル」の6種類。
このうちエコウィルは2017年に製造販売が終了しています。
以下の表は、エコウィルを除く5つの省エネ給湯器の特徴をまとめたものです。
比較項目 | エコジョーズ | エコフィール | ハイブリッド給湯器 | エコキュート | エネファーム |
---|---|---|---|---|---|
仕組み/概要 | 潜熱回収型 ガス高効率給湯器 |
潜熱回収型 高効率石油給湯器 |
ヒートポンプ給湯器 +高効率ガス給湯器 |
家庭用CO2 ヒートポンプ式給湯器 |
家庭用燃料電池 コージェネレーションシステム |
エネルギー(燃料) | 都市ガスまたはLPガス | 石油(灯油) | 電気+ガス | 電気 | 都市ガスまたはLPガス |
発電機能 | なし | なし | なし | なし | あり |
給湯方式 | 瞬間式 | 瞬間式 | 貯湯式 | 貯湯式 | 貯湯式 |
省エネ性能 | 給湯効率:95% 暖房効率:89% |
給湯効率:95% 暖房効率:92% |
給湯効率:148.1% | エネルギー利用率:300% | エネルギー利用率:95% |
定期点検 | 不要 | 不要 | 不要 | 必要 | 必要 |
交換費用の目安 | 25~45万円前後 | 25~45万円前後 | 50~80万前後 | 40~70万円前後 | 150~200万円前後 |
補助金制度 | 有 子育てエコホーム支援事業 賃貸集合給湯省エネ2024事業 その他自治体による |
有 子育てエコホーム支援事業 賃貸集合給湯省エネ2024事業 その他自治体による |
有 給湯省エネ2024事業 その他自治体による |
有 給湯省エネ2024事業 その他自治体による |
有 給湯省エネ2024事業 その他自治体による |
主要メーカー | リンナイ ノーリツ パロマ パーパス CHOFU(長府製作所) |
ノーリツ コロナ CHOFU(長府製作所) |
リンナイ ノーリツ |
パナソニック 三菱電機 日立 東芝 ダイキン コロナ |
パナソニック 京セラ アイシン精機 |
省エネ給湯器を選ぶ4つのポイント
省エネ給湯器はエコジョーズ、エコキュート、ハイブリッド給湯器、エコフィール、エネファームなどの種類があります。
名称が似ていることから違いが分かりにくく、どれを選ぶべきか悩まれる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、省エネ給湯器を選ぶ際のポイントを4つご紹介します。
燃料タイプに合わせて選ぶ
省エネ給湯器は、使用する燃料によって使用できる機種が異なります。
主にガス、電気、石油(灯油)などがあり、基本的には現在メインで使用している燃料タイプの省エネ給湯器を選定します。
都市ガスまたはLPガスを使用している場合はエコジョーズかエネファームかハイブリッド給湯器のいずれかがおすすめです。
寒冷地などで石油(灯油)を主に使われているならエコフィール、オール家電住宅であればエコキュートが適していると言えるでしょう。
予算から選ぶ
省エネ給湯器は従来型に比べて初期費用や交換費用が高い傾向にあります。
その分ランニングコストが低く抑えられることが特徴ですが、家計に無理なく予算の範囲で購入できる商品を選ぶことも大切です。
また、同じ給湯器でも性能によって料金が変動し、多機能・高性能になるほど本体代金が高くなります。
給湯専用と追い焚き付き、オートまたはフルオート、温水暖房対応機種であるか、貯湯タンクの容量など、どの機能が必要で予算に収まるかというポイントにも注意しておきましょう。
省エネ給湯器を安く交換するには
省エネ給湯器は国や各自治体が補助金制度を設けており、活用することで初期費用の一部を軽減できる可能性があります。
お住まいの地域で補助金や助成金制度が利用できるか確認しておきましょう。
また、依頼する業者によって省エネ給湯器の割引率が異なります。
相場を把握して安く交換できる業者を見つけるためには、複数業者に見積もりを取って比較することが大切です。
また、相見積もりを取る際には、料金の安さだけでなく、資格を持ったスタッフが在籍しているか、サービスや保証の品質、施工実績が十分にあるかなどのポイントも比較して、信頼できる業者を選ぶようにしましょう。
初期費用とランニングコストのバランスを検討する
初期費用と長期的な光熱費削減効果のバランスを考えることも、省エネ給湯器の選定ポイントとして重要です。
省エネ給湯器は、たくさんのお湯を使用する家庭ではランニングコストを抑えて光熱費の節約効果が期待できます。
一方、お湯をあまり使わないご家庭では、初期費用やメンテナンスコストを回収するのに時間がかかったり、トータルコストが上がってしまう可能性があるのです。
給湯器の寿命は一般的に10年前後とされており、この期間で省エネ効果を十分に得られるかどうかがポイントです。
導入前に、現在の1年間のお湯の使用量やガス代を基にして、10年間で初期費用を回収できるか計算してみることが大切です。
設置場所の環境に合わせて選ぶ
省エネ給湯器のなかでも、貯湯タンクを必要とする機種はサイズが大きく場所をとるため、設置場所が確保できるかどうかは必ず確認すべきポイントです。
エコジョーズやエコフィールは省エネ給湯器の中でも本体サイズがコンパクトですので、場所を選ばず設置できることが多いです。
エコキュートやハイブリッド給湯器、エネファームでは、本体が大きく貯湯タンクも必要ですので、スペースに余裕がないと設置することができません。
なお、大型給湯器の一部機種では、コンパクト型や薄型も用意されています。
一部マンションでは大型給湯器の設置に対応しているケースも増えてきており、特にエコキュートでは室内に専用スペースが確保されているマンションもございます。
設置スペースにご希望の省エネ給湯器が設置できるかどうかは、事前に専門業者などに相談して現地調査を受けておくと安心です。
省エネ給湯器の種類と特徴
エコジョーズ(省エネ型ガス給湯器)
エコジョーズの仕組みと特徴
エコジョーズは省エネ性能が高いガス給湯器で、都市ガスまたはLPガス(プロパンガス)を燃料にお湯を沸かします。
燃焼時に発生する排気ガスの熱を回収、再利用することによって、エネルギーの大半を無駄にせず効率的にお湯を作ることができるのです。
従来のガス給湯器は熱効率が約80%ですが、エコジョーズは熱効率95%以上となります。
湯沸かしの方式は瞬間式で、交換設置にかかる費用が比較的安価という特徴もあります。
エコジョーズのメリット
エコジョーズの最大のメリットは、ランニングコストの低さです。
エネルギー効率が高いため、ガス代の節約が期待でき、年間を通じて光熱費の削減につながります。
また、排出する二酸化炭素の量も従来型と比べて約15%低く、環境負荷が軽減されることも大きな利点です。
省エネ給湯器の中では安価な種類であり、都市ガスとLPガス(プロパンガス)それぞれに対応した機種が販売されていることから、導入のしやすさも魅力のひとつと言えるでしょう。
貯湯タンクが不要な瞬間式の給湯器ですので、本体サイズはコンパクトで設置場所の制約をほとんど受けません。
戸建てやマンションなどで幅広く使用されており、設置タイプが豊富で流通量が多く、業者に依頼してから工事完了まで短期間で済みます。
エコジョーズのデメリット
従来型のガス給湯器に比べると、設置費用がやや割高であるため、導入時の負担が大きく感じられることがあります。
お湯の使用量が少ない場合は節約効果が得られず、初期費用が回収できない可能性には注意が必要です。
機器の本体内部で発生する結露水を処理するために、ドレン配水管の工事を行う必要がありますが、ドレン排水の経路が確保できない場合はエコジョーズを設置することができません。
マンションなど集合住宅では、構造上の問題や、管理規約の内容によって、エコジョーズの設置ができない場合もあるため、事前に管理組合などに確認しておく必要があります。
交換・設置にかかる費用の相場
従来のガス給湯器からエコジョーズに交換する場合、25万円~40万円程度が一般的な費用の相場です。
上記価格はあくまで目安の価格であり、実際は機種やメーカー、機能・性能、設置場所などによって大きく異なります。
また、従来型からの交換や新規設置の際には、ドレン排水を処理するための配管工事を行うため、費用が発生します。
エコジョーズは補助金制度の対象となっており、募集要項を満たしていれば、3~7万円の補助金を受け取ることができます。
エコジョーズがおすすめの方
家族構成が4人以上、20号または24号など、お湯の使用量が多いご家庭では省エネ効果がより高くなるため、エコジョーズの導入がおすすめです。
ガスの使用量が多いほど光熱費の削減効果が大きく、導入コストの回収が早くなります。
都市ガスでも十分な効果がありますが、値段が高いLPガス(プロパンガス)をお使いであれば、より大きな節約効果が期待できます。
CO2排出量を約15%低減できることから、環境問題やエコを意識されている方にも適しています。
エコウィル交換のおすすめはエコジョーズ
エコウィルはガスを利用して発電し、発電時に発生する熱で水を加熱してお湯を沸かす家庭用ガスコージェネレーションシステムです。
エネルギー効率の高さやガス会社が専用の割引料金プランを用意していることなどから人気がありましたが、2011年に補助金制度が廃止となり、発電しても売電ができないこと、発電と売電が可能なエネファームに軍配が上がったことから、2017年9月30日をもって新規販売を終了することとなりました。
耐用年数は約10年で、修理や交換を検討しなければならない時期に差し掛かっている機種が増えています。
故障や不具合が起きたエコウィルを交換するなら、省エネ型ガス給湯器のエコジョーズがもっともおすすめです。
エコウィルをエコジョーズに交換する最大のメリットは、交換費用が安く済むということです。
貯湯タンクが必要ないため、機器代金を安く抑えることができます。
また、設置場所のスペースが広くなり、納期が早く、短時間で終わらせることができます。
ただし、エコジョーズには発電機能がありませんので、発電機能が必要であれば、エネファームの交換をご検討ください。
エコフィール(高効率型ボイラー)
エコフィールの仕組みと特徴
エコフィールは高効率型の石油給湯ボイラーで、従来の石油ボイラーに比べて省エネ性能が大幅に向上しています。
従来のボイラーでは排熱として大気中に捨てていた熱エネルギーを再利用し、効率的にお湯を作り出します。
熱効率は従来型が83%だったのに対し、エコフィールは95%まで上昇。
同時にCO2(二酸化炭素)の排出量は約13%削減できることから、省エネ技術と環境への配慮を両立させた仕組みが特徴です。
エコフィールは石油を主力燃料とする家庭で使用され、寒冷地や都市ガスが利用できない地域で特に重宝されています。
エコフィールのメリット
エコフィールの最大のメリットは、燃料効率が非常に高いことです。
排熱を再利用することで、従来型のボイラーに比べて約15%から20%の燃料削減が期待でき、ランニングコストの削減に大きく貢献します。
また、環境への負担も軽減され、二酸化炭素排出量の削減にもつながるため、エコ意識が高い方にも適しています。
湯沸かしは瞬間式と直圧式から選べるため、家庭環境に合わせた機種選びが可能です。
近年では瞬間式のエコフィールの需要が高く、使いたい時に必要な量のお湯を沸かすことができ、無駄が少ないという点から人気商品となっています。
短時間でお湯を沸かせるため、寒冷地でも安定した給湯を実現できる点もメリットの一つです。
エコフィールのデメリット
従来のボイラーに比べて高機能なため、商品自体の価格が高く、導入費用が高めです。
また、設置場所や排気経路など、設置条件が厳しくなる場合があります。
特に、古い住宅の場合、配管や基礎工事が追加で必要になることもあり、工事費用が高くなる可能性がある点にも注意が必要です。
お湯の使用量が少ないと、ランニングコスト削減のメリットが得られにくいことから、高額な初期費用を回収できるかどうかを検討して導入するようにしましょう。
交換・設置にかかる費用の相場
エコフィールの交換設置にかかるおおよその相場は、25~45万円前後です。
従来型の石油ボイラーから交換する場合は、ドレン排水を処理するための配管工事も追加で必要となります。
また、エコフィールを含む石油ボイラーは原油価格の変動を受けやすく、灯油タンクを別途用意しなければならない点にも注意が必要です。
エコフィールがおすすめの方
石油(灯油)の使用量を減らして光熱費を節約したい方には、エコフィールがおすすめです。
寒冷地などで石油を主な燃料として使用しており、お湯の使用量が多いご家庭や、温水式の暖房機器を使用されているのであれば、従来の石油ボイラーからエコフィールに交換することで給湯や暖房にかかる光熱費の削減効果が期待できます。
燃料の使用量が多いほどランニングコストは安くなり、初期費用回収が早く、長期的に経済的なメリットが得られると言えるでしょう。
また、エコフィールは従来型ボイラーよりCO2(二酸化炭素)排出量も少ないため、環境に配慮したエコな暮らしを目指す方にもおすすめです。
ハイブリッド給湯器・エコワン(ガスと電気の高効率給湯器)
ハイブリッド給湯器の仕組みと特徴
ハイブリッド給湯器は、ガスとヒートポンプ(電気)を燃料にお湯を沸かす省エネ給湯器です。
構成は、高効率ガス給湯器のエコジョーズ、電気式ヒートポンプ、貯湯タンクの3つのユニットの組み合わせとなっています。
ヒートポンプでお湯を沸かし、貯湯タンク内にお湯を貯め、お湯切れが起きると瞬間的にお湯を沸かせるエコジョーズが運転するのが基本の仕組みです。
2024年時点でハイブリッド給湯器の製造販売を行っているのはリンナイとノーリツの2社。
リンナイではハイブリッド給湯器の商品名が「エコワン」で、ノーリツでは「ユコアHYBRID」シリーズとして展開されています。
各社からお得な電気料金プランも用意されています。
ハイブリッド給湯器のメリット
ランニングコストが低く経済的で、環境への負荷も少ないです。
年間の給湯効率148.1%という非常に優れた省エネ性により、光熱費の削減効果とCO2排出量低減の効果が得られます。
従来型のガス給湯器と比較すると、給湯にかかる1次エネルギーの消費量は約47%減、CO2排出量は約56%削減します。
貯湯タンク内のお湯がなくなった際には、ガス給湯器が稼働してすぐにお湯を作るため、お湯切れの心配がありません。
タンク内のお湯は一日で使い切るため、無駄にお湯を作りすぎることもないです。
貯湯タンクが必要な省エネ給湯器の中ではサイズが比較的コンパクトで、太陽光発電と相性が良い点にも魅力があります。
災害にも強く、断水時にはタンクのお湯(水)を生活用水として利用でき、停電やガスの供給が止まったときでも、どちらかが復旧するとお湯が使えるようになります。
ハイブリッド給湯器のデメリット
エコジョーズ単体や従来型ガス給湯器と比較して、初期費用が高額となります。
エコキュートに比べると、ランニングコストが高くなります。
全体的なサイズが大きく、設置場所の確保が必要です。
貯湯タンク容量のお湯を使いきらないご家庭など、使い方や環境によっては光熱費の削減効果が低くなる可能性があります。
交換・設置にかかる費用の相場
ハイブリッド給湯器の交換・設置にかかる費用は、平均50~80万前後です。
以前は補助金が出ませんでしたが、最近では補助金制度の対象とする自治体が増えています。
条件が合えば約10~15万円の補助金が交付される可能性があります。
ハイブリッド給湯器がおすすめの方
家族人数が多いなどお湯をたくさん使うご家庭や、光熱費を節約したい、太陽光発電のご家庭などにおすすめです。
現在従来型ガス給湯器やエコジョーズを使用しており、更にランニングコストを下げたい場合にもおすすめです。
特にガス料金が高くなりがちなLPガス(プロパンガス)を使用されているならハイブリッド給湯器に交換することで、光熱費が格段に抑えられる可能性が高いです。
ガスと電気を両方使ってお湯を沸かすことから、電気のみのエコキュートやガスのみのエコジョーズよりも災害に強く、防災を意識した家づくりをお考えならハイブリッド給湯器がおすすめとなります。
エコキュート(自然冷媒ヒートポンプ給湯器)
エコキュートの仕組みと特徴
エコキュートは、空気中の熱を利用してお湯を作る「自然冷媒ヒートポンプ給湯器」です。
ヒートポンプ技術により、大気中の熱エネルギーを自然冷媒に吸収させて圧縮・高温化し、その熱で水を温める仕組みとなっています。
冷媒には二酸化炭素が使用されるため環境負荷が少なく、電気の使用量を抑えながらも効率的にお湯を作ることができます。
エコキュートのメリット
エコキュートのメリットは、ランニングコストが低く、環境負荷が少ないという点にあります。
ヒートポンプ技術を利用することで電力消費量を3分の1までカットし、エネルギー消費効率は300%以上を実現。
料金が割安となる夜間電力を使用してお湯を沸かすことで、給湯にかかる費用を約80%も低減することが可能となりました。
従来型の電気給湯器に比べて、少ない電力で多くのお湯を作り出すことができるのです。
また、冷媒には二酸化炭素を使うため、地球温暖化防止にも寄与します。
災害などで断水した際には、貯湯タンク内のお湯(水)を非常用の生活用水として使用することも可能です。
エコキュートのデメリット
貯湯式のエコキュートは、ヒートポンプユニットと貯湯タンクをセットで設置する必要があることから、瞬間式の給湯器と比較して導入コストが高く、広い設置スペースを確保しなければなりません。
タンク内のお湯を使いきってしまうと、お湯切れを起こす可能性がある点にも注意が必要です。
水道直圧式でないエコキュートでは、瞬間式よりシャワーの水圧が弱くなります。
また、電気料金の安い夜間にお湯を沸かすため、ヒートポンプユニットの運転時に生じる低周波音が目立つ場合があります。
寝室の近くにエコキュートを配置した場合は騒音が気になったり、近隣住宅からのクレームにつながる恐れがあるため、設置場所をよく考慮しましょう。
交換・設置にかかる費用の相場
エコキュートの交換・設置費用は、機種やメーカー、工事の難易度、施工場所の状況によって大きく異なります。
従来の電気給湯器から交換する場合、一般的には40~70万円程度が相場と言われています。
エコジョーズは補助金制度の対象となっているため、自治体やメーカーのホームページなどで情報を確認することをおすすめします。
通常は5~8万円、既存の電気給湯器の撤去を行う場合で最大18万円の補助金が交付される可能性がございます。
エコキュートがおすすめの方
給湯にかかる光熱費をとにかく抑えたいのであれば、省エネ給湯器の中でもっともランニングコストが低いエコキュートがおすすめです。
パナソニックが公表しているデータによると、エコキュートのランニングコストは月平均で約3,100円。
ガス給湯器の約2分の1、通常の電気温水器の約4分の1程度まで給湯にかかるコストを抑えることができるとされています。
特に、現在通常の電気給湯器を使用されているのであれば、故障や不具合にともなう交換の際にはエコキュートへの変更がベストと言えるでしょう。
オール電化の住宅にお住まいの場合や、オール電化へのリフォームをお考えの場合にも向いています。
エネファーム(家庭用燃料電池)
エネファームの仕組みと特徴
エネファームは、家庭内で発電と給湯を同時に行う家庭用燃料電池システムです。
発電と給湯の仕組みは、燃料電池内に供給された都市ガスまたはLPガス(プロパンガス)から水素を取り出し、空気に含まれる酸素と化学反応させることで、電気を生成。
発電時に発生する高温の熱を利用して、お風呂やシャワー、温水暖房などで使用するお湯を沸かします。
2009年5月より世界初として販売が開始され、2024年1月時点では、累計販売台数が50万台を突破しています。
狭小スペースへの設置が可能となる、燃料電池ユニットと貯湯タンクが一体型のコンパクトタイプも販売されています。
エネファームのメリット
電気とお湯を効率よく作ることから、光熱費の削減効果が一番のメリットとなります。
燃料を燃焼させる従来の発電方式と異なり、化学反応によって発電するため、熱エネルギーを効率的に利用できます。
貯湯タンク内のお湯(水)は断水時に生活用水として使用可能で、デイ電磁でも給湯や発電に対応、非常時のバックアップ電源として機能するため災害に強いです。
また、発電時に排出されるのは水蒸気が大半で、地球温暖化の一因であるCO2(二酸化炭素)の排出量が少ないことから、環境への影響にも配慮されています。
エネファームのデメリット
コストの高さが主なデメリットとなります。
エネファームの交換設置にかかる費用は、省エネ給湯器の中でも特に高額です。
同じ発電機能のある給湯器でであるハイブリッド給湯器(エコワン)に比べると、交換設置にかかる費用もランニングコストも高くなります。
また、余剰電力の売電がメリットのひとつですが、エネファームのは電気の使用量に応じて発電するため余剰電力が発生することは少なく、余った電力の買取に対応しているガス会社も限られている点に注意が必要です。
構造が複雑で部品の種類も多いため故障リスクが高く、修理費用が高額になりがちで、定期メンテナンスは有料となっています。
そのほかのデメリットとして、エネファームの取り扱いは都市ガス会社またはLPガスの販売業者となりますので、業者の選択肢はかなり限定されます。
燃料電池ユニットと貯湯タンクの両方を設置する必要があることから、全体的なサイズが大きく、スペースが十分に確保できない場合には設置ができません。
稼働時には低周波が発生することから、健康被害が出たり、近隣住宅と騒音トラブルに発展する可能性もございます。
交換・設置にかかる費用の相場
エネファームの交換費用は、本体価格や工事費などの合計が、約150~200万円です。
2009年の販売直後は本体価格だけで300万円を超えていましたが、現在では本体価格が100万円以下で販売されている機種もあり、以前よりは導入しやすい価格帯となりました。
補助金制度の対象となっており、対象条件を満たせば約18万円の補助金が交付されます。
エネファームがおすすめの方
電気代やガス代といった光熱費を節約したい、災害に備えたい場合には、エネファームがおすすめです。
シャワーやキッチンで使うお湯だけでなく、床暖房や浴室乾燥といった温水暖房システムを利用されている方など、給湯にかかる光熱費が高い方ほど節約効果が高くなります。
また、普段からタンク内にお湯(水)を貯めたり、発電システムが内蔵されていたりすることから災害に強く、防災を意識されている・災害に強い家づくりを目指す方にもおすすめです。
※当店はエネファームの交換設置に対応しておりません。エネファームの修理交換、新規設置は、ガス会社のみ対応可能です。お近くのガス会社に直接ご相談ください。
省エネ給湯器の交換設置で使える補助金制度
省エネ給湯器に関する主な補助金制度をご紹介します。
住宅省エネ2024キャンペーン
環境省・国土交通省・経済産業省が連携して住宅の省エネ化を支援する補助金制度。
2025年カーボンニュートラルの実現に向けて実施されています。
子育てエコホーム支援事業
- ■対象機器
- エコジョーズ、エコフィール
- ■補助金額
- 3万円/1戸につき、いずれか1台まで
- ※補助額が合計5万円以上で補助対象。必須工事を含めて、補助額の合計が5万円以上で申請可能
- ■申請期間
- 2024年4月2日〜予算上限に達するまで(最長2024年12月31日まで)
- ■管轄
- 国土交通省
給湯省エネ2024事業
- ■対象機器
- エコキュート、ハイブリッド給湯器、エネファーム
- ■補助金額
- エコキュート:基本額8万円、性能に応じて最大5万円加算
- ハイブリッド給湯機:基本額10万円、性能に応じて最大5万円加算
- エネファーム:基本額18万円、性能に応じて最大2万円加算
- ※戸建て住宅は1戸につき2台まで、共同住宅は1戸につき1台まで
- ■申請期間
- 2024年4月2日〜予算上限に達するまで(最長2024年12月31日まで)
- ■管轄
- 経済産業省
賃貸集合給湯省エネ2024事業
- ■対象機器
- エコジョーズ、エコフィール
- ■補助金額
- 追い焚き機能なし:5万円/台
- 追い焚き機能あり:7万円/台
- ※一戸につき、いずれか1台まで
- ■申請期間
- 2024年4月2日〜予算上限に達するまで(最長2024年12月31日まで)
- ■管轄
- 経済産業省
自治体が独自で実施する補助金制度の例(2024年)
自治体独自の制度は地域によって異なるため、お住まいの地域の制度を確認することをおすすめします。
以下で、自治体が実施する補助金制度の例を、いくつかご紹介します。
- ■東京都千代田区
- 省エネルギー改修等助成制度:高効率ガス給湯器の設置で3万円/台
- ■東京都世田谷区
- エコ住宅補助金:潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)への交換で2万円/台
- ■大阪府大阪市
- 大阪市住宅省エネ改修促進事業:高効率給湯機の設置に対して補助(金額は条件により変動)
- ■大阪府泉大津市
- 住宅用ゼロカーボンシティ推進補助金:潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)への交換で1万円
- ■兵庫県加東市
- 加東市エコハウス設備設置補助について:高効率給湯器(エコジョーズ・エコキュート・エコフィール)の契約設置で3万円/台