風呂釜・バランス釜・壁貫通式ふろ給湯器についての解説です。
風呂釜は、浴槽内にためた水を機器に循環させて加熱する、追い焚き方式の湯沸かし器のことを指します。
近年は屋外設置型のガス給湯器が主流になっため、新築物件に新たに設置されることは少なくなりました。
ですが、市営住宅や県営住宅、団地、マンションやアパートなどの集合住宅、築年数の古い一軒家などでは現役で使用されていることも多く、住宅の構造によっては風呂釜またはバランス釜しか設置できないこともあるため、まだまだ需要があります。
風呂釜やバランス釜について、基本的な機能や種類、交換工事にかかる費用の目安、交換時期と故障のサイン、壁貫通式ふろ給湯器への交換ほか、詳しく紹介いたします。
風呂釜・バランス釜の種類
BF式・バランス釜(自然給排気式風呂釜/密閉式)
FF式(強制給排気式風呂釜/密閉式)
FE式(強制排気式風呂釜/半密閉式)
CF式(自然排気式風呂釜/半密閉式)
RF式(自然給排気式風呂釜/屋外設置)
風呂釜、バランス釜、壁貫通型ふろ給湯器の違い
風呂釜(ふろがま)
風呂釜(ふろがま)は、浴槽に溜めた水を本体まで循環させて加熱する追い焚き専用の給湯器です。
浴室で使うお湯しか供給できないため、近年では配管を通して家中の蛇口にお湯を送ることができる屋外壁掛式のガス給湯器が主流となり、すでに生産終了となっている製品も多く、近年では新築物件に設置されることはほとんどありません。
集合住宅で風呂釜が故障した際に同等機種への交換が規約で定められている場合があること、戸建てでも昔ながらの使い慣れた風呂釜を使い続けたいという方がおられることなどから、まだまだ需要はあり各メーカーから製造販売が続けられています。
古いタイプの風呂釜では電池を使って火を起こしていましたが、FF式やFE式などの機種では100V電源が必要となります。
バランス釜(バランス式風呂釜)
バランス釜は正式名称を「バランス型風呂釜」と言い、Balanced Flueを略して「BF式風呂釜」「BF釜」と表記されることもあります。
風呂釜の一種であり、設置場所は浴室内で、浴槽の横に並べるように設置します。
給排気は自然給排気式で、ガスの燃焼に使う酸素の給気、燃焼後の排気はすべて屋外で行います。
強風時に排ガスが逆流しない構造で、故障時にも屋内の空気汚染・不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故の発生リスクが低いです。
乾電池で点火を行うため電源を必要とせず、停電時にもお湯の使用が可能となっています。
種類は大きく分けて4つのタイプがございます。
バランス釜の種類
- 追い焚き専用
-
基本の追い焚き機能のみが搭載されている。
- 追い焚き+シャワー
-
バランス釜本体にホースが接続されている。追い焚き機能だけでなく、シャワーも使用できる。
- 追い焚き+シャワー+
浴室内給湯 -
バランス釜本体に、シャワーホースと出湯管が接続されている。追い焚きとシャワー機能に加え、出湯管(蛇口)からお湯を直接出して使用できる。
- 追い焚き+シャワー+
浴室内給湯+浴室外給湯 -
お風呂の追い焚き、浴室内のシャワーと蛇口からの給湯、浴室の外の給湯に対応。配管を通して、キッチンや洗面台など浴室外の設備にもお湯を供給できる。
風呂釜は給排気の方法が異なる製品が何種類か製造されていて、バランス釜(BF式)が販売される1965年以前はCF式やFE式といった半密閉式の風呂釜が主流でした。
半密閉式の風呂釜は、室内の酸素を給気し長い排気筒を通して燃焼ガスを屋外に排気する構造から、不完全燃焼による酸欠や一酸化炭素中毒などの事故を起こすことがあり、安全面に不安がありました。
そこで給排気を屋外で行う密閉式のバランス釜が開発され、室内の空気汚染が発生しにくく安全にお湯を供給できることから、代替品として用いられるようになったのです。
安全性の高いバランス釜の需要は高く、市営や公営の住宅、団地などを中心に広く普及していましたが、浴槽と並べて設置するため場所を取り小さな浴槽しか置けない、隙間が多く掃除の手間がかかる、現在主流となっている屋外設置式の給湯器と比べてシャワーの水圧が弱く操作性も悪いなどの理由から、現在は衰退傾向にあります。
そのため、そのほかの風呂釜と同様に、現在は新築の物件にバランス釜が設置されることはほとんどありません。
壁貫通式ふろ給湯器
バランス釜の給排気トップ部分に設置できる、小型の給湯器です。
壁の中に埋め込む形で取り付けるため、本体が目立たず見た目がスッキリとし、バランス釜で圧迫されていた空間を有効活用して広い浴槽を設置することができます。
専用のリモコンを使って、お湯はりや追い焚きや足し湯などの操作をスイッチひとつできるため、操作性にも優れています。
壁貫通式ふろ給湯器は、ホールインワン・カベピタ・バスイングなどメーカーにより名称が異なりますが、基本性能や設置方法は同じです。
メーカー | 壁貫通式ふろ給湯器の名称 |
---|---|
ノーリツ | バスイング |
リンナイ | ホールインワン |
ハウステック | カベピタパックイン |
バランス釜を交換するなら、壁貫通式給湯器がおすすめ
故障や不具合が起きたバランス釜の交換では、壁貫通式ふろ給湯器へのリフォームがおすすめです。
安定した給排気が魅力のバランス釜ですが、設置場所が浴槽のため空間を圧迫する、お湯が溜まるのが遅い、隙間が多いためカビが発生しやすく掃除もしにくいなどデメリットが多く、近年では見かけることが少なくなりました。
壁貫通式ふろ給湯器はバランス釜の代替品として開発された小型の給湯器で、バランス釜の煙突部分(給排気トップ)用に開けられた建物の穴に格納して設置します。
もともとあった壁の穴を再利用するため、壁を壊すなど大規模な工事を必要とせず、バランス釜本体のサイズ分だけスペースが空くため大きな浴槽が設置可能となっています。
見た目がスッキリと綺麗で掃除がしやすく、リモコンを使うため使い勝手が良く温度調節も簡単です。
機能は給湯専用タイプ、追い焚きありタイプ(オートorフルオート)の2種類からお選びいただけます。
壁貫通型給湯器のメリット
大きい浴槽を設置できる
壁貫通タイプの給湯器の大きさは、バランス式風呂釜の給排気トップ部分(煙突)と同程度で、壁に埋め込むような形状で設置します。
バランス釜は浴槽の横に並べて設置することから機器の横幅30cmほどのスペースを圧迫し、約800mmの狭い浴槽しか設置できませんでした。
壁貫通型ふろ給湯器ならバランス釜の本体サイズ分だけ空いたスペースを有効活用できるため、1,100mmまたは1,200mmの大きいサイズの浴槽の設置が可能です。
浴槽の高さは通常タイプ550mmと、お年寄りやお子様でも出入りがしやすい浅型タイプ500mmの2種類。
素材は耐久性が高くサビや腐食に強いFRP (繊維強化プラスチック)、または傷がつきにくく清掃性や保温性に優れた人工大理石からお選びいただけます。
シャワーの水圧が上がる
バランス釜は号数が6.5号または8.5号であり、バーナーの容量が小さいことから、シャワー水圧が弱い・蛇口から出るお湯の量が少なくなかなかお湯が溜まらないという欠点がありました。
壁貫通式給湯器の号数は6.5号・8.5号(8.2号)に加え、16号も用意されています。
16号は1分間に16リットルのお湯を供給するため、快適な水圧でシャワーを楽しむことができます。
リモコン操作で簡単にお湯はり・追い焚きができる
壁貫通式ふろ給湯器は、お湯はりや追い焚き保温、足し湯などの操作はリモコンを使います。
バランス式風呂釜はお湯の温度調節がツマミですが、リモコン操作なら1℃ごとの正確な温度調節が可能です。
オートストップ付きならお湯はりが完了すると自動でお湯が止まるため、お湯を止め忘れる心配がありません。
また、オートタイプやフルオートタイプでは追い焚き保温が自動で行われるため、2番目以降の入浴でも快適な温度でお湯に浸かることができます。
エコジョーズタイプなら光熱費を節約できる
エコジョーズとは、従来型では捨てられていた排気熱を回収・再利用することで効率よくお湯を沸かすことができる、省エネ型のガス給湯器です。
エネルギーを無駄なく使うことでガスの使用量を減らし、給湯にかかるガス代・光熱費を抑える効果や、地球温暖化の一因となるCO2の排出量を削減する効果があります。
壁貫通式給湯器は従来型とエコジョーズの2タイプが用意されており、お湯をたくさん使う・ガス代を節約したい場合はエコジョーズがおすすめです。
浴室暖房付き浴槽との併用でヒートショック対策ができる
壁貫通式給湯器は一部の暖房端末付き浴槽と併用することで、浴室暖房機能を利用することができます。
ヒートショックは冬の寒い時期に浴室内で発生するリスクが高く、特に自律神経や血圧調節などの機能が低下している高齢者は注意が必要です。
暖房付きの壁貫通式給湯器は専用の浴槽に温水を送り、エプロンの下部からファンで温風を吹き出すことで、冷えやすい足元から効率よく浴室全体の空気を暖めます。
入浴前に浴室内を暖めておくことで、寒さをやわらげて快適なバスタイムを楽しめると同時に、ヒートショックの予防にもつながります。
壁貫通型給湯器のデメリット、リフォーム時の注意点
賃貸住宅の場合はリフォームができるか確認が必要
公営住宅や賃貸マンションほか集合住宅でリフォームを行う際は、管理会社・組合の施工許可が必要です。
規約内容によっては現状と同じガス機器への交換と定められているケースもあり、リフォームが認められない・許可がおりない場合は工事を行うことができません。
バランス釜から壁貫通式ふろ給湯器・浴槽への交換をご希望でしたら、まずは管理会社に工事ができるかご確認ください。
設置環境によっては取り付けができない
バランス釜から壁貫通式給湯器と専用浴槽の交換は、現場の状態によって工事ができない可能性があります。
例として、集合住宅で各階に合流ダクトが配置されており排気先(排気トップ)が1つにまとめられている、落とし込みまたは埋め込み方式によって浴槽が設置されている場合は工事を行うことができません。
既設のバランス釜が上部排気式で煙突(排気トップ)が天井に伸びている、水道配管やガス栓の引き込みができない位置関係にある、老朽化によって浴室の壁がもろく崩れる恐れがあるといったケースも同様に施工は不可となります。
工事が可能か判断するためには事前の現地調査が必要ですが、給湯器交換のユプロでは現場調査・見積りが無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。
費用が高くなる
壁貫通式給湯器を設置する場合、給湯器本体のほか、専用の浴槽やシャワー付き混合水栓(蛇口)の取り付けも新たに必要となります。
部品代に加えて作業費も上がるため、通常の風呂釜交換に比べるとトータルでかかる費用が高くなる点には注意が必要と言えるでしょう。
また、バランス釜は点火に乾電池が使われていましたが、壁貫通式給湯器は100ボルトの電源が必要です。
コンセントが無い場合は配線確保のために追加で電気工事を行わなければならず、別途費用が発生します。
風呂釜・バランス釜の交換工事にかかる費用について
風呂釜、バランス釜、壁貫通式給湯器の交換費用は、種類や工事内容によって変動します。
ユプロにご依頼いただいた場合、風呂釜から風呂釜への交換は約11~16万円、バランス釜からバランス釜への交換は約11~16万円、バランス釜から壁貫通式ふろ給湯器と浴槽の交換は約32~40万円が交換費用のおおまかな目安です。
工事内容 | 交換費用の目安 | |
---|---|---|
風呂釜の交換 | 約11~16万円 | |
バランス釜の交換 | 約11~16万円 | |
バランス釜の交換/浴室リフォーム (壁貫通式ふろ給湯器+浴槽+リモコン+水栓) |
約32~40万円 | |
※エコジョーズは上記価格より約1万5千~4万円アップ |
上記の価格は標準工事を想定した参考価格となっています。
基本的な内訳は「本体価格+工事費+処分費+その他部品代」の合計ですが、設置状況により作業内容や必要な部品が異なります。
集合住宅ではエレベーターの有無、壁貫通式ふろ給湯器の場合は浴槽やリモコンの種類なども費用に影響するため、詳細な見積もり金額をお出しするには、現場での調査が必要です。
風呂釜・バランス釜は10年ごとの交換がおすすめ
風呂釜・バランス釜の耐用年数は、約10年です。
お湯の使用頻度や設置環境にもよりますが、使用開始から10~15年ほど経過すると、配管や内部部品の損耗から動作不良を起こしやすくなります。
風呂釜・バランス釜が故障した場合の対応は、10年以上使用していた場合は交換で、数年程度しか使用していない場合は修理がおすすめです。
10年ごとの交換がおすすめの理由
リンナイやノーリツほか各メーカーはガス機器を安全に使用できる期間を10年と設定しており、保守部品の製造も10年で終わることから10年ごとの交換を推奨しています。
また、10年以上使用した風呂釜・バランス釜は機器全体が劣化していることから、一箇所だけ部品を交換しても症状が改善しない可能性があり、修理してもすぐに別の箇所が不具合を起こして修理費がかさむ恐れもあるため、修理ではなく交換した方が良いと言えるでしょう。
風呂釜・バランス釜 故障の症状
- 着火しにくい、火種がつかない
- お湯がなかなか出なくなった
- お湯の温度や水圧が不安定
- シャワーが使えなくなった
- バランス釜のハンドルが回らない、空回りする
- バランス釜を使うと本体がガタガタ振動する
- 風呂釜からガス臭、焦げたニオイなど異臭がする
- 風呂釜やバランス釜からスス、黒煙が出る
ご使用中の風呂釜・バランス釜に上記のような症状があれば、修理または交換が必要となります。
もし異音や異臭がする・煙が出ている場合は、無理に使い続けると火災や爆発、一酸化炭素中毒といった事故を誘発する恐れがあり大変危険ですので、すぐに使用を中止してください。
機器の使用期間が10年以上であれば交換が必要となるため、工事は給湯器交換のユプロにおまかせください。
使用年数が浅いならメーカーに修理を依頼しよう
もし使用年数が浅い風呂釜が故障した場合は修理がおすすめです。
使用開始から1~3年程度であればメーカー保証によって無料の修理やメンテナンスサービスを受けることができます。
給湯器などガス機器の修理は、メーカーまたはメーカー指定の代理店が行いますので、修理対応がご希望でしたらメーカーに直接お問い合わせください。